長子相続と末子相続…的な違い

  • 2010/03/13(土) 21:31:48

私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)
内田 樹
文藝春秋
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結論として結ばれた

反ユダヤ人主義者とユダヤ人との
アナクロニズムの逆転した関係性というのは、

長男と末っ子の関係に根源的に相似して見える。


そしてこれは、旧約聖書に末子相続が
しばし描かれていることと無関係でもあるまい。
と繋がった思いだ。



解説すると、

長男は常にその行動は自らの試行錯誤の中で失敗し、
親や世間に叱られることによって学習する。その
習得パターンは、罪と贖罪の連鎖によって培われる。

それはつまり、自分の行動を抑制する行動規範は常に、
同じ過ちはしない、より良く生きるための当然の帰結
であると共に、現実的な自らの失敗や罪の贖罪の意味を
不可分に負っていることにもなる。



その点、末っ子は違う。
弟は宿命的に、先達者としての兄たちの失敗を幼少時から
見て育っている。何をすれば叱られるか、何をしなければ
失敗しないかを、多くの場合自らが経験し、または失敗
する前に知ることとなる。

それはつまり逆に言えば、失敗してもいない…犯しても
いない罪によって、自らの行動を抑制していることに同じ
である。もちろんそれは、そうしなければ犯すであろう
罪を失敗を事前に回避している行動に他ならないものでも
あるのだが。



そしてこの両者の間には、罪の有無という分かち難い
差異が生まれてしまう。
もし、社会が罪を過ちを許さない
状況にあれば、兄は何かに付け過去の過ちを論われ未来が
望めない。
末っ子は、兄の失敗を踏み台として、その上を
何の贖罪(投資)もすることなく、フリーライダーとして
駆け回ることになる。
両者の間に絶対的な不公平が生じる。

弟はその嫉妬を回避するために犯してもいない罪を兄と共に
背負うことによって先達者への敬意を示さなければならない。


オイシイトコ取りをして、それを実力主義の結果だとか
神の見えざる手によって得た正当な報酬だとして、
それを怠ることは、ある意味ではやはり罪ともなろう。


もうすこし具体的な例えを示すならば…、汗水流して作り上げた
鉄道網を、実際に重労働を押して作り上げた者達は、その当時の
安い賃金だけで完成と共に放逐され、完成した後に入ってきた
者達は、切符切りだけの軽作業にもかかわらず、その賃金収入で
左うちわで暮らせる永遠の未来が約束される…と喩えてみたら
どうか。



しかし、社会が長子相続の常識の元では、弟たちは家から追い出される
運命にある。仮に実力主義であっても、出生の遅れはそのまま
埋めがたい経験の差として乗り越え難いものである。
結果弟連中は、
新規事業を興し、またはニッチで食い扶持を探さなければならない。
だから、たとえ時の運だったとしても、時代を変える新規産業を
一から立ち上げた創始者となれば、それによって、既存の社会を
どんなに変えることになったとしても、当然の結果だと考えがちだ。
社会から放逐された者が、目には目をで過去に自らを放逐した連中を、
逆に放逐し帰して何が悪いか。となりがちだ。悔しければ同じように
新しく成功すればいいのだと。
しかしそれも、努力だけでどうにも
ならない側面もある。





歴史や経緯があって、それらが消しがたいものであることは判る
つもりだが、やはりこれを「ユダヤ人」という言葉一つによって、
概念を丸抱えさせてしまうのはどうかと思う。


原罪という考え方はキリスト教のものであると思うし、彼らは
ローマのマイノリティとして「ユダヤ人」を担ってきた経験の
上に構築されているはずではないのか。
また、同じ立場はカトリック社会の中のプロテスタントたちが
背負おうとしていたものでもあると思う。ユダヤ人だけに独特な
ものとして独占させてしまうのはいかがなものだろう。


現在「キリスト教」として信仰されている宗教環境は、キリスト教
だというより、ケルトなど原始宗教とチャンプルされたそれであって、
自称「敬虔なキリスト教徒」が、保守として守ろうとしている原風景
のようなものは、決してキリスト教固有の信仰そのものだは言えない
のではなかろうか。


同じ事を、「ユダヤ人」がその信仰の根源としてキリスト教や
反ユダヤ人主義者とは異なる独特のなにかを潜在的に持ち続けている
と考えるのも、どうかと思うのだが…。
現在イスラエルの地で彼らが
行っていることを見ると、とてもそのようなことを私は信じられない。

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